環境系の学生と資格について

 昨年度で明星大学の講師を終了しました。それでドメイン更新のタイミングでサイトを消滅させようと思っていました。しかし、今年度から母校の静岡県立大学(環境生命科学科)で講義を持つことになりましたので、もうちょっとだけ続けようと思います(はたして学生は一人くらい見ているのか?)。

 今年度、3年生を対象にした講義で時間が余ったので学生に資格に興味あるのか尋ねました。

 誰も手をあげないので最近の学生は資格には興味がないのかと思っていたら、後で研究室で学生から「半数以上が資格の勉強してますよ」と聞かされました。

 何の資格かと尋ねたら、やっぱり環境計量士

 本サイトでも何回か取り上げたことのある資格です。

 大学側としては、就活において企業から評価されそうな資格の取得を推奨しており、環境計量士をその一つに位置付けているようです。そうしたこともあり、環境計量士の勉強をしている学生が多いのだとか。私の出身研究室では3年連続で合格者を出していると聞きました。むかし、私がM1のとき、密かに勉強していた同期が合格してから、堰を切ったように研究室のOBやらその後の学生やら猫も杓子も勉強して取ったと聞くようになりました。それが今も脈々と続いていたとは。

 それはそれで良いとして、ここでは違う視点も含めて資格取得について考察してみます。

1.就活での効果は?

 (環境計量士に限らず)資格を持っているということは就活においてその分野に関する一定の能力を持っていることの証明にはなります。一方、企業の採用担当者がそこに重点を置いて採用を決めるとは到底思えません(これまで大小何社かの採用担当者との交流を通じてもそんな印象でしたし)。

 以前、就職白書によると多くの企業が基礎学力重視(特に技術系の学生)であることを紹介しました(過去記事:成績は就職に影響するのか?)。特に技術系に関しては基礎学力があっての応用力です。であるのなら、わざわざ専攻分野に関係のありそうな資格を取得して一定学力があることを証明しなくても、授業の成績や卒論・修論等の研究内容で十分だと考えることができます。また、それ以上に、就職白書からは、学生の「人柄」や「熱意」等を重視していることが示されています。将来の事業を担っていくにふさわしい人材かどうかを判断する上でこれらを重視するのは当然と言えば当然です。頭が良くても人格に問題有り、とか、情熱が感じられない人には仕事をまかせられないでしょう。資格を取得したことで生じる過信や慢心は場合によって採用にマイナスになるかもしれません。資格そのものは通常、企業にとってほとんど価値がない場合が多いですから、そこのところを理解せずに鼻高々になっても、ですね。そんなことよりも業界研究をしっかりやった方がいいかも。

 ただ、大学のブランド力によっては少し状況が違ってくると感じる部分はあります。売り手市場と言われる最近でもブランド力が弱い大学(のさらに需要の少ない学科や研究室)では学生が就職に苦戦している状況があります。そうした学生にとっての資格とは、ブランド力のある大学の学生の場合とは意味合いが違ってくるようです。

2.専門分野の資格、専門外分野の資格

 上記のように、専攻分野の学力を示すためならその分野に深く関係した資格が有用でしょう。
 法学部なら司法試験、司法書士、行政書士
 商学部、経済学部、経営学部あたりなら公認会計士、税理士、中小企業診断士
 建築科なら建築士
と勝手にイメージしてみました。
 これが環境系なら環境計量士、ということですかね。

 ただ、上記のように、環境系の学生がその分野の知識があることを資格で証明する意義はそんなに大きくないのではないか、というのが私の考えです。

 資格の勉強をするならむしろ異分野に目を向けた方が世界が広がります。ただし、専門分野と相乗効果が期待できる分野、ということで。

 私の知人で活躍しているのを見ると複数の分野を融合して新たなものを生み出しているパターンが多いです。

 例えば、金融システムの構築をやっていた後輩がベンチャー企業を立ち上げ、ITを活用した医療キットを作っています。ポータブルのキットを通じて収集した身体情報をクラウドに飛ばしてAI診断し、病気を発見するというものです。ITメカ医療等の分野が融合しています。

 別の後輩は、やはりIT分野ですが、IT企業の営業からベンチャー企業を起こして産廃業者向けの電子手続きシステムを作って販売しています。ITスキルをバックボーンに産廃関係の法律についても熟知していて、全国でセミナー講師もやっています。IT法律の融合です。

 私の職種である弁理士は皆、知的財産に関わる法律の専門家であると同時に(技術系出身者は)自分の専門分野(メカとか電気とか化学とか)があります。法律×専門技術分野、なのです。

 これらは企業の中で働いていても同じです。学生のうちに弁理士資格を取って開発職に就けば、知財に配慮した開発に役立つかもしれません。別に知財部に配属されなくても、やり方次第でその知識を活かす途はあります。

 このように異分野のものを融合することによって様々な展開がでてきます。

 環境系だと電気とか機械とかITは縁遠いですが、上記のように相乗効果はいくらでも期待できます。

 法律経営会計といった分野でも同様です。

 そうした知識の底上げに資格の勉強を活用するのは有りでしょう。

 ただ、知識を何かに活かすには経験が重要です。上記例のいずれも資格や知識だけでいきなり勝負できるわけはなく、実際に手足を動かし、スキルを積み上げていく必要があります(ただ、必要な資格の取得は早い方が良いのは間違いない)。

 あと、思い出したのですが、上記、私の同期が環境計量士をとった後にやってきた環境計量士ブーム(?)の中、別の研究室の博士課程まで行った友人が「俺は薬剤師の資格を持ってるからそんな精神安定剤は必要ない」と冷やかな目線でした。そんな友人は博士号を取った後、薬剤師になりました。

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