前回、就活開始のタイミングについて取り上げましたが、出遅れた場合や納得いく就職先が見つからなかった場合、希望する職種に就きやすくするために大学院進学を考えている人がいるかもしれません。
以前、講義の受講生から大学院に進学したら就職はうまくいくのか、さらに悪くなるのか、という質問を受けたこともあります。
大学院進学は就活成功要因になり得るのか?
就職までの猶予期間を設けるため、または挽回するために進学するのは邪道だという突っ込みはあるかもしれません。
私が学生のときは(化学系の分野では)とりあえず修士まで行っとくか、という雰囲気がありました。
就職と進学の比率は半々か4:6くらいだったでしょうか。院試に失敗して就職したという同期もいました(今と違って大学院進学も競争が激しく、院浪した友人もいました)。
そうした背景には、開発など専門性のある職種に就きたいなら学卒より修士の方が有利、という噂があったことを記憶しています。この点は今もあまり変わらないのではないでしょうか。
大学院進学による就職成否のポイントについて検討してみました。
想定するのは修士課程。
以前のデータ(過去記事:成績は就職に影響するのか?)も用いました。
(情報源:就職白書2017https://www.recruitcareer.co.jp/news/20150215_01.pdf)
下表は企業が採用基準で重視する項目です(%の数値は重視する企業の割合)。
学業に関わる項目 | 建設業 | 製造業 | 流通業 | 金融業 | サービス・情報業 |
基礎学力 | 25% | 45% | 31% | 33% | 33% |
学部・学科/研究科(専攻) | 50% | 38% | 8% | 6% | 9% |
大学/大学院で身につけた専門性 | 19% | 35% | 8% | 6% | 11% |
大学/大学院での成績 | 14% | 24% | 9% | 19% | 10% |
大学/大学院名 | 16% | 22% | 11% | 10% | 12% |
資格取得 | 13% | 7% | 7% | 12% | 13% |
1.狙っている業種は?
上表中、相対的に見て、建設業や製造業は専攻を重視していることがわかります。例えば、建設業であれば建築科かどうか、を重視する場合が多いであろうと予想できます。
また、製造業は専攻に加えて専門性を重視することが多いです。これは大学院で専門性を高めた人材にも期待することが多いと考えることもできます。
一方、金融業は専門性重視が少ないです。大学院に進学するリスクは高い(院に行ったことは評価されず、2歳年をとっただけになることがある)と考えることができます。
専攻や専門性が重視されないのであれば、当然、院卒よりも若い学部卒の方が評価されるでしょう。
これが院に行くことで選択肢が狭くなると言われる所以?
上記は全体をざっくりと業種別で分けました。
言うまでもありませんが、本来は狙っている企業別に確認した方が良いですね。
2.専攻分野の企業ニーズは?
企業からのニーズが多い専攻分野であるほど大学院に進学する意味を見出しやすく、大学院進学によるリスクは低いと考えられます。
業種で見ると製造業がそうした企業ニーズが多いと言えます。
ここで企業ニーズ、と言っても、学科をひとくくりにすることはできません。
私の大学院時代(環境分野)を振り返ると、
・水処理系の研究室→就職が良い(研究分野の企業ニーズ多)
・政策系の研究室→微妙(研究分野の企業ニーズ少)※
という感じでした。
※政策的なテーマは国や地方自治体が主体となるので、公務員試験を受けて合格しないとなかなか道は開けないようでした。
このように同じ専攻分野であっても研究室によって就職状況がかなり異なります。
個人的には、どういった企業と共同研究をやっているか、は研究室を見る切り口になると思っています。その研究室がやっている研究が企業の研究につながっているわけですから。そうした研究に関わる人材ニーズがあることの裏付けにもなっています。
これは、共同研究に携わった学生がその企業に入社するケースがよくあることからも言えます。
3.その他
大学院はブランド力のあるところに行った方がいいのか?
人によっては、知名度が低い大学の場合にそのまま上に行くべきか、名の知れた大学の大学院に行くべきか、ということが気がかりかもしれません。
上表では大学名/大学院名を重視する企業が少なからずあります(特に製造業)。そうした企業は大学院だけでなく、どの(学部のときの)大学かも見ている場合があります。
そうした場合、これはどうしようもないことなので気にしても仕方がありません。
大学をひとくくりで見るよりも、上記の通り研究室単位で見た方が良いと思います。
有名大学でも就職に苦労する研究室がある一方、大学の知名度は高くなくても就職に困らない研究室というのも多くあります。
これは職種の問題に近いものを感じます。
有名大学でずっと純粋学問をやってきた人より、専門学校で看護師資格を取った人の方が職に困らない(?)という構図に近いのかも。
博士課程まで行くのもありか?
この問題は以前触れたことがありますのでそちらを参照(博士号は就職、転職に役に立つか?)。
以上、不純な(?)動機での一考察でした。