10士業:試験免除ルート

 私が大学3年生のとき、選択科目の授業に弁理士があらわれたことがあります。文献検索に関する授業だったと思います。その時の弁理士の言葉で一番印象に残ったのが(というかそれしかおぼえていない)、「特許庁の審査官として何年間か働いたら弁理士資格が取れる」ということでした。

 その弁理士は国家公務員試験に受かって特許庁に入庁し、このルートで資格を取ったらしく、「弁理士試験に受かるよりも特許庁で審査官として働いて取った方がはるかに楽だ」と言っていました(その時代の弁理士試験は今よりも狭き門だったようです)。

 このように試験が免除になる資格は他にもあります。

 これまで10の士業について、たびたび触れてきましたので、免除ルートについてもまとめてみました(一部免除は除外)。

 資格 免除
あり
勤務
年数
免除の要件
(詳細は条文参照)
根拠
条文
弁護士        
司法書士 10年 裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官若しくは検事事務官としてその職務に従事した期間が通算して十年以上になる者又はこれと同等以上の法律に関する知識及び実務の経験を有する者であつて、法務大臣が前条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力を有すると認めたもの 司法書士法4条(2号)
行政書士 20年 国又は地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間及び特定独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第二項に規定する特定独立行政法人をいう。以下同じ。)、特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)又は日本郵政公社の役員又は職員として行政事務に相当する事務を担当した期間が通算して二十年以上(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による高等学校を卒業した者その他同法第五十六条に規定する者にあつては十七年以上)になる者 行政書士法2条(6号)
土地家屋調査士 〇  10年 法務局又は地方法務局において不動産の表示に関する登記の事務に従事した期間が通算して十年以上になる者であつて、法務大臣が前条第一項第一号から第六号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び技能を有すると認めたもの 土地家屋調査士法4条(3号)
弁理士 7年 特許庁において審判官又は審査官として審判又は審査の実務に従事した期間が通算して7年以上になる者 弁理士法7条(3号)
公認会計士        
税理士 23年 官公署における事務のうち所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税若しくは酒税の賦課又はこれらの国税に関する法律の立案に関する事務(税理士法8条4号)/官公署における国税に関する事務のうち前号に規定する事務以外の事務(税理士法8条5号)/官公署における事務のうち道府県民税(都民税を含む。)、市町村民税(特別区民税を含む。)、事業税若しくは固定資産税の賦課又はこれらの地方税に関する法律の立案に関する事務(税理士法8条6号)に従事した期間が通算して23年以上になる者 など 税理士法8条(4号~10号)
社会保険労務士 10年 学校教育法による高等学校又は旧中等学校令(昭和十八年勅令第三十六号)による中学校、高等女学校若しくは実業学校を卒業した後、国又は地方公共団体の公務員として労働社会保険諸法令の施行事務に通算して十年以上従事した者者 など 社会保険労務士法4条(1項3号)
中小企業診断士        
不動産鑑定士        

 10の士業のうち司法書士行政書士土地家屋調査士弁理士税理士社会保険労務士が上記年数勤務することで取得できます。

 ただ、資格試験に関しては免除ですが、勤務するための採用試験は当然受けなくてはなりません(世の中そんなに甘くないです)。

 勤務年数も23年(税理士)20年(行政書士)とかなりあります。

 最も短いのが7年(弁理士)です。

 弁理士試験の場合、最近の合格者データによると平均受験回数は4.17回であり、合格までの勉強期間は大体4~5年くらいだと予想します。
 情報源:https://www.jpo.go.jp/oshirase/benrishi/shiken/h29toukei/pdf/h29_saisyu_goukakusha.pdf

 さっさと資格を取りたい人は素直にその試験を受けた方が早いかもしれません。

 税理士や行政書士についても、試験免除になるまでの長さを考えると同じことが言えそうです。これらは公務員として長年働いた人へのご褒美みたいなものですかね。

 それでも上記試験免除ルートは上記年数さえ働けば資格を取れますので、試験に連戦連敗するよりも早く資格を取れる可能性はあります。上記弁理士試験の平均受験回数4.17回というのは合格者の統計データであり、その背後にはかなりの不合格者がいるわけですし。

 もし、20代で働き始めることができたとすると、30~40代で上記資格を手にできます。

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 まず私にとって一番関係がある弁理士資格について

 特許庁の審査官になるチャンスは毎年あります(任期付審査官:一般の国家公務員試験とは別にこのような制度があります)。

 特許庁HP:特許庁任期付職員(特許審査官補)の採用について

 受験資格はざっくりと、

 学卒(技術系)以上、かつ、企業や大学等で研究開発又は知財業務を通算4年以上

を満たしていればOKです。大学院の研究も通算年数に含めることができるようで、理系の人にとって受験資格のハードルはそれほど高くありません。

 倍率はわかりませんが、毎年40人弱採用されています(毎年の弁理士試験の合格者数を考えるとこれは結構な人数です。この人数の試験免除弁理士が誕生していることになるのでしょうかね。ぐぬぬっ)。

 論文過去問は特許庁に公開されています(以下リンク先)。
 https://www.jpo.go.jp/shoukai/saiyou/ninki_qa.htm

 受かれば審査官補となり(2年間)、3年目に審査官上がります。

 すなわち、審査官補2年+審査官7年=9年で弁理士資格を取得できます。

 公務員待遇で給料がもらえ、しかも、独立後の実務でも役に立つ経験ができるというのはかなりおいしいかもしれません。採用されれば、ですが。

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 その他はどうでしょうか?

 司法書士の資格が得られる裁判所事務官などは裁判所の採用試験を受ける必要があります。試験については裁判所HPに公開されています。

 裁判所HP:試験の実施結果

 平成29年の裁判所事務官試験(大卒区分)は東京(東京高等裁判所の管轄区域)で16倍の倍率です。院卒区分だと東京は45倍ですが、地方では2倍という低倍率のところもあります(高松)。

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 税理士資格が得られる税務職員については人事院のHPに採用試験に関する情報が公開されています。

 人事院HP:国税専門官採用試験

 平成29年度の倍率(大卒)は約5倍です。

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 一般の国家公務員試験や地方公務員試験を受けて資格分野に該当する部署に配属、というルートは割愛します。

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 なお、冒頭の授業の話ですが、当時の私にとってはチンプンカンプンだったので次の授業から行かなくなりました。

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