成績は就職に影響するのか?

 学生のレポートを採点しながら、C(可)評価にしたらその学生の就職活動に悪影響があるのかな?と思うことがあります。かと言って理由もなく内容がないレポートの成績を上げることはできませんが。

 成績は採用に影響するのか?

 成績が良いほど就職がうまくいくのでは、と思う人は多いでしょう。

 ただ、採用基準は企業によって異なりますし大学の知名度専攻分野など採否に影響しそうな要因は成績以外にもいろいろと考えられます。

 このように一概には言えない問題ですが、はたしてどうなのか、分析してみました。

 採用に関することは採用する立場にある企業の情報に基づく必要があります。

 “就職白書”(株式会社リクルートキャリア 就職みらい研究所)に企業が採用基準で重視する項目について公開されています。これを用います。

 <就職白書2017>
 https://www.recruitcareer.co.jp/news/20150215_01.pdf

 採取データ数は以下の通りです。

全体 従業員300人未満 従業員300~999人 従業員1000~4999人 従業員5000人以上
1169 297 423 339 110
建設業 製造業 流通業 金融業 サービス・情報業
84 390 247 126 319

 当該資料によると“人柄”や“熱意”を重視する企業が圧倒的に多いです。トータル的に“成績”はさほど重要ではないように見えます。

 本当にそうでしょうか?

 学業に関係する項目を重視する企業が少ないとまでは言えないでしょう。こうした項目を重視しないのであれば、わざわざ大卒を採用しなくてもいいわけですし。また、重視する項目は理系文系でも違ってくるでしょう。

 学業に関わる項目にフォーカスします(下表)。

 下表の数値%は「重視する」という企業の割合です。

<業種別>

 学業に関わる項目 建設業 製造業 流通業 金融業 サービス・情報業
基礎学力 25% 45% 31% 33% 33%
学部・学科/研究科(専攻) 50% 38% 8% 6% 9%
大学/大学院で身につけた専門性 19% 35% 8% 6% 11%
大学/大学院での成績 14% 24% 9% 19% 10%
大学/大学院名 16% 22% 11% 10% 12%
資格取得 13% 7% 7% 12% 13%

 表を縦または横で比較したときに、相対的に数値が高いものを赤字で表示しました。

1.製造業、建設業は他の業種よりも学業に関する項目を重視

 製造業は他の業種に比べて学業全般に関わる項目を重視しています。建設業は特に専攻を重視しています。その分野に特化した技術職が多いからでしょうか。

2.基礎学力はどの業種でも求められることが多い

 これは仕事で応用力を発揮するためにも重要な要素ですね。

3.建設業、製造業は特に専攻、専門性を重視

 文系就職が多いであろう流通業、金融業、サービス業に比べると、建設業では建築科、製造業では電気科、機械科、化学科、情報系の学科、といったように技術職が多い業種ではこれは当然のことですね。

4.多くの業種が成績よりも専攻、専門性重視

 上表をよく見ると、多くの業種が成績よりも専攻や専門性重視です。成績が良くない人にとっては安心材料?

 大学院について言えば、通常、真面目にやっていればオールA(※)が当たり前ですので、成績で採否を評価する意味はあまりないと感じます。私の経験では研究分野によるところが大きいと感じます(例えば、環境分野だと水処理系の研究室はどの代でも就職はうまくいっているようでした)。
 ※最近の大学の成績評価には特Aまでありますが、ここではA(優)、B(良)、C(可)、D(不可)ということで

 金融業だけは専攻や専門性よりも成績重視の方が割合が高いです。データ的にはおもしろいです。

5.大学、大学院名重視は成績重視と同程度

 大学や大学院名を最も重視しているのは製造業ですが、その割合は成績重視とそんなに変わらないです。金融業は他の業種に比べて成績重視です。

 10年位前、ある大手メーカーの社長から「うちは大学院がどこかより学部のときの大学がどこかを見ている」と聞いたことを思い出しました。大学院だけ名の通ったところでは不十分という意です。このように個々の企業で見ると、学部のときの大学や成績を重視する企業はやはりあります。

6.資格重視は少ない

 弁護士や公認会計士のような難関資格ならいざ知らず、学生の一般的射程範囲の資格では採用を決定づける要因にはなりにくいでしょう。

 ただ、上記4の通り、建設業製造業では他の業種よりも専門性重視ですので、専攻で求められる専門性と合致した資格であれば、専門性の証明に多少役立つかもしれませんね。また、(数値上大した差ではないかもしれませんが)サービス・情報業では専門性や成績よりも資格取得を重視することが多いです。

<規模別>

  300人未満 300~999人 1000~4999人 5000人以上
基礎学力 34% 36% 39% 33%
学部・学科/研究科 19% 22% 25% 12%
大学/大学院で身につけた専門性 12% 15% 26% 25%
大学/大学院での成績 16% 14% 18% 14%
大学/大学院名 11% 14% 19% 13%
資格取得 13% 10% 7% 8%

7.企業の大小による差はあまりない

 強いて言うなら規模が大きい企業では専門性を重視することが多いです。成績に関して規模はあまり関係ないようです。また数値は小さいですが、規模が小さい企業では資格を重視することが多いです。

 基礎学力は規模に関係なくどの企業も重視することが多いです。

 そして基礎学力の高さは、普通に考えると、大学のレベルや成績と相関がありそうです。結果として成績が良い学生が採用されやすいということになるのかもしれません。その傾向が大きいのが製造業です。

 以下、ざっくりとした分析結果です(学業に関わる項目だけで考えた場合)。

建設業 製造業 流通業 金融業 サービス・情報業
基礎学力専攻専門性重視 学業全般重視 基礎学力重視 基礎学力成績重視 基礎学力資格重視

 特に、建設業製造業では成績よりも専攻重視であることが数値にあらわれています。まあ、(理学部などの)学生からすると専攻分野によって企業ニーズが大きく異なるという実情の方が気になるところだと思います。

 学内システムで最近の求人情報を見ると、技術職で多いのは、電気機械情報建築あたりです。

 この点、ニーズが少ない分野の学生は成績のこと以上に悩ましい問題ですね。

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