10士業:登録者数で見る資格の有用性

 以前、10士業について試験の難易度を考察しました(過去記事:10士業:試験の難易度考察)。

 今回は試験に受かった後に関してです。その資格が合格者にとって実際にどれだけ有用なのかという視点で考えてみました。

 試験に受かるまでは合格することだけを考え、ひたすら勉強あるのみです。夢に向かうこの段階はある意味、一番幸福な時間なのかもしれません。

 試験に受かるとすぐに現実世界に引き戻されます。その資格でどう勝負していくのか本気で考えると、得体のしれない不安が少なからず湧いてきます。

 ここで試験合格者を単純に、

・その資格で勝負する人(その分野の組織に入る、独立開業など)

・そうでない人(従前通り業界とは無関係に企業勤めを続ける人など)

の2タイプで考えてみます。

 前者が多い資格ほど、その資格を有効活用している人が多いと言えそうです。

 そして資格を活かしているかどうかの指標として今回、登録者数をとりあげてみます。

 資格試験に受かったら、登録料を納め、資格登録するのが通常の流れです。

 資格登録を維持するのには労力費用がかかるのが一般的ですので、その資格が役に立たないと判断した場合にあえて登録する人は少ないのではないでしょうか(名刺に肩書を書くためだけに登録している人も、ある意味、その資格を活用しているということになりますかね)。

 各資格の登録者数は下表Bの部分です。

  A.10年間の合格者数 B.登録者数 B÷A 登録者データ
弁護士 19,490 38,821 2.0 2017年12月1日現在
司法書士 8,360 22,238 2.7 2017年4月1日現在
行政書士 50,900 46,957 0.9 2017年10月1日現在
土地家屋調査士 4,380 16,718 3.8 2018年1月4日現在
弁理士 5,970 11,225 1.9 2017年11月30日現在
公認会計士 21,230 29,346 1.4 2017年1月31日現在
税理士 9,640 77,069 8.0 2017年11月30日現在
社会保険労務士 34,330 40,807 1.2 2017年11月30日現在
中小企業診断士 9,440 18,695 2.0 2008年3月1日現在
不動産鑑定士 1,090 8,268 7.6 2017年1月1日現在
<データ出所>
10年間の合格者データ:以前の記事の直近10年の合格者数平均値×10
登録者数データ(上表順):日本弁護士会連合会日本司法書士会連合会日本行政書士会連合会日本土地家屋調査士会連合会(検索DBから)日本弁理士会日本公認会計士協会日本税理士会連合会厚生労働省中小企業庁経済産業省

 登録者数を過去10年間の合格者数で除し(上表のB÷A)、合格後に登録する人の割合の高低から3分類してみます。

 なお、合格者数の増減傾向など各資格の個別事情は一切考慮していないため、実情と違う解釈になっている可能性もあります。あくまでご参考ということで。

■相対的に数値が低い資格(行政書士、社会保険労務士)
 試験に受かっても登録しない人が多い資格だと考えられます。
 特に行政書士は1.0を割っています(10年分の合格者数よりも登録者数が少ないことになります)。
 試験にチャレンジしてみただけの人がかなり多いと言えそうです。
 ただ、これらの資格は登録者の絶対数も多いので、その点では仕事のニーズも他士業よりあるのかもしれません(なお、上表から業界の競争の激しさまでは読み取ることはできません。以下同様)。
 また、活用しないのに試験は受けるという人が多い、すなわち、ムダに勉強のライバルが多いので(行政書士試験は絶対評価なのでこれに該当しませんが、相対評価である社会保険労務士は)資格を取って本当に活かしたいと思う人にとっては一苦労だと言えるかもしれませんね。

■相対的に数値が高い資格(税理士、不動産鑑定士、土地家屋調査士)
 試験に受かったらかなりの人が登録する資格、すなわち、その資格で生計を立てている人が多い資格だと考えられます。
 上表からは資格登録者数が過剰なのか、それとも不足しているのかは判断できませんが、仮に登録者数が過剰だとしても登録する価値があると判断している人が多いと考えることもできます。
 合格者数が大きく変動しないこと、登録者の年齢構成が均等であることの2点が前提になりますが、業界流入と退出が一定だとすると他士業より安定した業界だと考えることができるかもしれまん(高齢になって辞めていく人もそれなりにいるからその分のポストが空くイメージ)。

■中間の資格(弁護士、司法書士、弁理士、公認会計士、中小企業診断士)
 上記2つの中間にある資格です。
 数値は2.0付近であり、約20年分の合格者数に相当する登録者数です。
 未登録者が少ない資格もあるでしょうし、一方で試験に受かっただけで登録しない人もそれなりにいる資格もあるでしょう。
 
私の弁理士同期合格者では登録せずに企業勤めを続けている人はいます(メーカーとかサービス業とか開発とか法務とか業種、職種は様々)。
 こうした人たちを見ると、趣味的に、あるいは将来何かあったときのための保険的に、試験に挑戦する人もそこそこいることを感じます。
 また、診断士は企業勤めの人がかなり多いです(これまで私が出会った診断士は企業勤めの人が圧倒的に多かったので)。
 診断士の場合、協会加入は任意で、毎月会費を納めなくても登録できるようなので、資格で生計を立てなくても登録者は多いと見ています(診断士の知人の話では、資格を維持するのに所定期間内にコンサル実務をやらなければならないそうです。自分でコンサル先を見つけられない人は協会費を払ってコンサル先を紹介してもらい実務実績を作らなければいけないという変な現象も。ノーメンテで資格を維持できるというわけではありません)。

 以上は、あくまで登録者数という士業サイドからの考察であり、企業ニーズは全く考慮していません

 日本の人口構造を考えると当分の間、国内ニーズが減っていく(一方で、高齢者士業が抜けた分の仕事が出てくる?)のではないでしょうか。

 そうした中でいかに勝負していくかということが求められますね(試験合格によるエクスタシーはほんとに一瞬です)。

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