今回の話、ふと昔を思い出しましたので。理系は必見かも。
「再現性」という言葉を聞いたことがありますか?
私は卒論の時に先生から初めて聞きました。
私の卒業論文は、培養したネズミの肝細胞を用いて当時の最新精密機器で発がん物質を検出する、というものでした。その先生は私の顔を見るたびに「再現性はとれてるか?」と聞いてきました。
最初は何のことかわからず、
「あ、まあ、はい」
とテキトーすぎる返事をしていました。
この「再現性」とは同一条件下で同じことをやった場合にブレのない(ブレの少ない)試験結果が得られることをあらわす言葉です。
例えば、精密分析機器を使って、ある化学物質の測定をやったとしたます。
同じ量の化学物質を測定したときの機器の測定値があるときは10ng(ナノグラム)、またある時は20ng、では信頼性のある実験はできません。
この心配がなくなって初めて本当の研究がスタートだと言えます。
誰から教わることなくこれを意識していたらかなり優秀!だと勝手に認定します。
日常的には機械は絶対に同じ値を出す、と感じるかもしれませんが、実は世の中、品質がブレているものが多いです。
例えば、ポンプをコンセントにつないで空気を吸引する場合、吸う空気の量は、その時々によって微妙に違います。
コンセントからの電源出力が瞬間瞬間でかなり違う(ブレている)ためです。
こうしたブレは日常生活では支障はありませんが、精密な実験をやる場合は信頼性に大きく関わります(上記においてはブレをなくすため、コンセントからの電気を安定化電源装置を介して一定にする必要があります)。
さらに測定機器そのものの精度も時間とともに変化します。そのため、定期的に測定機器を校正する必要があります(企業においても校正を行っていない機器で測定した実験結果は正当なデータ、正当な技術報告書として認められないでしょう)。
<校正> calibration:キャリブレーション 測定器の目盛りを,正しい基準量と比較して補正値を知ること (ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典) |
再現性があるとは、同じ条件なら何回やっても同じ値がでる、ということですが、100%が難しい実験系では、そのブレが何%以内におさまっているかで判断することになります。
例えば、〇〇細胞はありまーす、じゃなく、再現率は何%だ、と答えるのが理想でしょうか(生物系では再現性はあまり厳密には問われないでしょうが)。
話しは飛びますが、今年の夏の高校野球でボールが飛びすぎるという疑惑がありました。本サイトに度々登場する薬剤師の友人は「ボールの製造ロットによる品質の差が大きいんじゃないか?」と言っていました。薬の品質も製造ロットによってかなり差がある場合が多いという経験に基づく予測です。私も何らかの外的要因があるのではないかと思っています。高校生の体力が向上したから、という説はあまり信じていません(最後は何の話?)。
つづき:理系男(その3)