中小企業診断士(その2)

 最近、中小企業診断士という言葉をよく耳にします。

 先日、IT企業に勤務する知人と飲みましたが、その人は今、中小企業診断士試験の勉強をしています。

 昨年、1次試験を合格したものの2次試験で涙をのみ(財務会計分野で点数をこぼしたとか)、2次試験受験資格を持ち越せる今年が勝負、という意気込みでした。

 また、名刺交換をする金融機関の人たちには結構な確率で中小企業診断士がいます。

 先日訪れた金融機関では企業支援を行う部署の全員が中小企業診断士の資格を持っているとのことでした。

 中小企業の経営をどうやって支援するのか施策を立てるのに中小企業診断士としての知識が役に立つということでしょう(金融機関の場合、中小企業診断士として中小企業を手とり足取りサポートするというわけではなく、中小企業支援のための施策を考えたりするのが主だと感じます)。

 この資格については本サイトを始めた頃に一度、取り上げました(資格:中小企業診断士)。

 中小企業診断協会によると、試験内容は以下の通りです。

<1次試験>
マーク式・7科目・科目合格有(翌年度と翌々年度2年間)・8月最初の土日に実施
()内は必要な知識
A.経済学・経済政策(経済)
B.財務・会計(簿記など)
C.企業経営理論(マーケティング)
D.運営管理(生産管理など)
E.経営法務(法律)
F.経営情報システム(IT)
D.中小企業経営・中小企業政策(補助金など国の施策)

<2次試験(筆記)>
筆記式・4科目・翌年度まで持越し可・10月下旬の日曜日に実施
A.中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 Ⅰ(組織経営的な内容)
B.中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 Ⅱ(マーケティング的な内容)
C.中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 Ⅲ(生産管理的な内容)
D.中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 Ⅳ(財務・会計的な内容)

<2次試験(口述)>
面接・10分程度(筆記試験の事例の中から出題)・12月中旬の日曜日に実施

 合格率は1次、2次筆記ともに概ね20%、2次口述は人柄などを見る試験だとも言われており、合格率はほぼ100%です。

 以上より1次、2次の掛け算による確率は
 0.2×0.2=0.04(4%)!

 一筋縄ではいかない試験だとわかります。
 なお、以前、士業試験の難易度に関して触れましたが、診断士試験は士業の中でも合否を読みづらい試験だと分析しました(過去記事「10士業:試験の難易度考察」)。

 この資格はMBAとよく比較されることがあります。

 MBAは以前の記事「MBAは就職、転職に役立つか?」で触れたように大学院修士課程のことなので、まじめにやればほぼ修了することできるものだと思います。
 一方、この資格は上記合格率からわかるように取得が保証されていません。
 少ない費用と時間で取得できる可能性もありますが、ドツボにはまる可能性もあります。

 データを見ると毎年の1次試験受験者が2万人近くで、最終合格者が1000人近くです(協会の公表結果)。

 この資格を持っているからと言って必ずしも企業コンサルができるわけではないだろうということは以前の記事にも書きましたが、何と言っても国家資格ですし、幅広いビジネス知識を有してると評価される場合が多いのではないでしょうか(経営とか財務とかITとか法律とか、まさに試験範囲は経営全般に関わりますので)。

 私の周りの合格者たちは皆、財務・会計がネックだ、と言っています(上記知人も現在は財務・会計だけをひたすら勉強しているらしいです)。

 簿記などの知識や売上などの数値データから経営分析する知識が求められます。

 経済は新聞やニュース、ITはパソコン、といった感じで馴染みやすいものに関連付けて学習できそうな科目が多い中で、財務・会計は多くの人にとって馴染みが薄い分野でしょう。

 ただ、高校生でも簿記1級を難なくとる人もいるようですし、財務・会計に抵抗がなければ合格は近いのかもしれませんね。

 また、この資格試験についてふと感じたことですが、
 法律や理系的な試験と違って企業コンサルティングに絶対的な正答はないはずです。

 だとすると独自の経験や先進的な取組みに基づいて解答したことが実務的に有用なもの(例えば、顧客企業の売上に貢献する妙案)だったとしても、従来的な理論から外れたもので、解答として突飛だと判断されれば点数に結びつかないかもしれません。

 自分の考えを押し殺し、出題者の意に沿った解答をしなければならないジレンマが他の資格試験よりも大きいかもしれませんね(そうした意味では経験や余計な知識を持たない学生の方が出題者の意図に従順な解答ができて有利かも)。

 最後に、この資格を取ったら食えるかどうか、ですが、
 弁理士であり、中小企業診断士でもある人(その人は診断士の取得に2年、トータルで2000時間弱かかったらしいです)に聞いたところ、「この資格は足の裏の米粒だとよく言われている」と笑っていました。

 診断士には専権業務(その業務を遂行するのにその資格が絶対必要だという決まりがあるもの)がないという点を指してのコメントだと思います。

 まあ、結局は資格を持つ人のやり方次第なのでしょうけれど。

関連記事:中小企業診断士(その3)

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