先日、資格試験の難易度について触れました(記事「10士業:資格の難易度考察」)。それの続編的な感じです。
資格というと、お勉強できる人が有利、と考えている人が多いのではないでしょうか?
どのような資格がおすすめか、と興味を示す学生が多い割に、今のところ、難易度が高いと言われている資格を取ろうという意気込みの人を見たことがありません。
遠慮がちな性格の学生が多いのか、最初から無駄だとあきらめているのか、そのへんはよくわかりません。
勉強は苦手だから資格は取りづらい、という考えがあるのかもしれません。
確かに東大や京大など偏差値が高い大学ほど資格取得者が多い傾向にあるのは事実です。国家公務員Ⅰ種試験にもそれはあらわれています。
しかしながら、東大出身者は資格試験に受かりやすい、とか、大学受験でイマイチだった人は資格を取得するのも難しい、と結論づけることまではできないと思います。
データにもとづき確認してみたいと思います。
資格試験の中で弁理士試験は受験者や合格者の出身大学まで統計情報を公開しています。
何のためにそこまで公開するのかよくわかりませんが、せっかくですので、そのデータを活用しました。
平成27年および平成28年の弁士試験受験者・合格者データ(合算値)を用いました。
両方の年にデータがある大学を拾ってきました。また大卒以外(中学、高校、短大、専門、その他)の学歴は除外しました。従って公表されているデータと少し違いがあります。
出身大学 | 受験者 (H27&H28) |
合格者 (H27&H28) |
合格率 |
東京大学 | 463 | 61 | 13% |
京都大学 | 379 | 59 | 16% |
早稲田大学 | 305 | 24 | 8% |
大阪大学 | 297 | 27 | 9% |
東京理科大学 | 296 | 25 | 8% |
東京工業大学 | 279 | 25 | 9% |
東北大学 | 259 | 24 | 9% |
日本大学 | 223 | 14 | 6% |
慶応義塾大学 | 214 | 24 | 11% |
中央大学 | 207 | 11 | 5% |
名古屋大学 | 176 | 14 | 8% |
北海道大学 | 164 | 16 | 10% |
九州大学 | 156 | 12 | 8% |
明治大学 | 135 | 7 | 5% |
筑波大学 | 118 | 11 | 9% |
関西大学 | 112 | 13 | 12% |
神戸大学 | 101 | 9 | 9% |
名古屋工業大学 | 95 | 5 | 5% |
立命館大学 | 90 | 5 | 6% |
横浜国立大学 | 84 | 7 | 8% |
広島大学 | 74 | 10 | 14% |
上智大学 | 74 | 7 | 9% |
東京農工大学 | 70 | 4 | 6% |
電気通信大学 | 69 | 5 | 7% |
静岡大学 | 66 | 5 | 8% |
青山学院大学 | 61 | 5 | 8% |
千葉大学 | 61 | 5 | 8% |
大阪府立大学 | 52 | 10 | 19% |
東海大学 | 52 | 5 | 10% |
金沢工業大学 | 51 | 4 | 8% |
大阪市立大学 | 49 | 4 | 8% |
芝浦工業大学 | 49 | 5 | 10% |
奈良先端科学技術大学院大学 | 13 | 2 | 15% |
その他大学 | 2324 | 132 | 6% |
受験者数の多さもあり、合格者数では東大、京大が毎年ワンツーフィニッシュしています。
合格率で何か感じるものがあるでしょうか?
例えば、
・東大出身者でも10人に1人くらいしか受かっていない
・一方で(受験者数は東大よりもかなり少ないものの)東大よりも合格率が高い大学がちらほらある
など。
上表を見て、私は、大学入学時の学力は資格取得にあまり関係ないのだと感じます。
士業は専門家としての知識量が求められます。
従って、試験に合格するためには、発想力よりもその分野の知識を積み上げていくことができるかが重要だと感じます。
地頭の良し悪しよりも丁寧にコツコツやれるかですかね。
また、上表には記載していませんが、高卒の学歴で合格している人もいます。
つまり、大学で何を専攻しているかも資格取得にはあまり関係がないと言えそうです。
私は大学の時、弁護士というのは法学部を出た人がなる職業だと思っていました。
しかし、知り合いができて実感しましたが、実際には理系出身の弁護士も結構います。
大学受験で身につけた知識と資格に合格するための知識は別物です。
さらに上表からは、大学入学時の偏差値が高かったからと言って、資格取得が楽勝だとは限らないことがうかがえます。
ここで、上表中、注目したい数値は“その他大学”の合格者数です。東大、京大の合格者数よりも多いです。
上表には旧帝大、地方国立大、理系学部にも力を入れている私立大がそれなりに入っています。“その他大学”はこれら以外の大学ということになります。そして、これらの少数派を取りまとめると、どの大学よりも多くなります(これが国家公務員Ⅰ種と大きく違うところ)。
ただ、出身大学が資格取得とは全く関係ないと言い切ることはできないかもしれません。
受験者数で上位16大学と下位17大学、その他大学の合格率を比べると下表の通りです。
受験者数上位16大学 | 13.2% |
受験者数下位17大学 | 8.7% |
その他大学 | 5.7% |
これを見ると受験者数が多い、すなわち、資格マインドの高い人が多い大学ほど合格率が上がっています(まあ、合否は個人の問題なので、だから何?と言われればそれまでですが)。
結論としては、
★出身大学によって受かりやすさに多少差がある(合格率より)
★ただし、出身大学など関係なしで受かっている人はかなり多い(合格者数より)
でしょうかね。
今回は弁理士試験結果に基づきましたが、他士業の試験でも近いことが言えるのではないでしょうか。
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