10士業:試験の難易度考察

 これまで資格に関しては国家資格を中心に個別に紹介してきました。

 今回は代表的な国家資格である10の士業(しぎょう/さむらいぎょう)について受験データをもとに、世間的に言われている試験の難易度が実際はどうなのか考察してみました。

 司法試験に受かる人はその他の試験にも楽々と受かるのかというと、そうだとも言えないかもしれません。
 資格試験には問題そのものの難しさだけで計れないものがありそうです。
 確かに司法試験は問題の難しさでは資格試験の頂点なのかもしれませんが、合格のしにくさではさらに上をいく試験もあるかもしれません。

 そうした疑問が頭のかたすみにあったので今回の記事を思いつきました。

 なお、資格の有用性に関しては触れません(資格を生かすも殺すもその人次第ですので)。

<対象にした資格>
 商工会議所の相談窓口に設置されることが多い以下の10士業を対象にしました(下表)。
 これまでの記事で紹介していないものもあるので、各資格の業務についても併せて記載しました。
 資格間でオーバーラップする業務がちょこちょこあります。
 業務範囲の広さで言えばやはり弁護士ですね。司法書士行政書士社会保険労務士などの業務は含まれていますし、それだけでなく弁理士登録税理士登録などもすることができます(スキルがあるかどうかに関係なく、登録すれば弁理士の業務も税理士の業務もやれるということです)。まさに資格の王様です。
 ちなみに私が持っている弁理士資格だと行政書士登録することができます(ただ、業務が別物ですし、弁理士で行政書士登録している人は多くないです)。

弁護士 法律全般
司法書士 相続、遺言、登記代理など
行政書士 契約書類の作成代理など
土地家屋調査士 土地分筆など
弁理士 特許など知的財産全般
公認会計士 会計、監査、経営など
税理士 税金のことなど
社会保険労務士 人事・労務関係、年金など
中小企業診断士 創業、経営など
不動産鑑定士 土地の評価など

<受験資格・試験形式・評価方法>

 以下に示すように受験資格制限がないものが多いです。
 その中で司法試験ロースクールに行くか、予備試験という試験に受からなければ受験できないということでハードルが高くなっています(ということで下表では予備試験についても記載しました)。
 税理士社労士にも受験資格制限がありますが、大学で一般教養をまじめにやっていれば、3年生になったときには受験資格を有しているようなものです(司法試験、税理士試験については過去記事「M&A関連資格」を、社労士試験については「保険系の資格」を参照)。

  受験資格 試験形式 評価方法
弁護士
(司法試験)

(予備試験合格者など)
択一・記述 相対評価
弁護士
(予備試験)
不要 択一・記述・口述 相対評価
司法書士 不要 択一・記述・口述 相対評価
行政書士 不要 択一・記述 絶対評価
土地家屋調査士 不要 択一・記述 相対評価
弁理士 不要 択一・記述・口述 相対評価
公認会計士 不要 択一・記述 相対評価
税理士
(所定科目履修など)
記述 相対評価
社会保険労務士
(所定単位取得など)
択一・記述 相対評価
中小企業診断士 不要 択一・記述・口述 絶対評価
不動産鑑定士 不要 択一・記述 相対評価

 オーソドックスな試験形式としては、択一(マークシート)→記述→口述、でしょうか。
 口述がない試験はほっとしますよね。
 通常の資格試験だと口述試験は全員合格に近い場合が多いという印象ですが、私が受けたときの弁理士口述試験では3分の1近くが落ちていました(今考えても怖ろしすぎ)。その後、弁理士になった人で口述試験に落ちた経験を持つ知り合いが何人かいます。体験談を聞くと、精神的ダメージは1次試験や2次試験で落ちたときの比ではなかったそうです(資格取得を断念したくなるほどだとか)。

 また、評価方法が“絶対評価”か“相対評価”かについても記載しました。
 一般的にそう言われているというものをそのまま載せただけなので、実際にどうなのかはよくわからない部分もあります。
 間違いがあるといけませんので、興味のある資格の詳細情報については自分で確認してください。

 ここで、絶対評価とは合格基準点(例えば60点)以上であれば合格と判断される評価方法のことです。問題の難易度が高ければ基準点に達せず、受験者全員不合格ということもあり得ますし、難易度が低ければ受験者全員が合格する可能性もあります。
 一方、相対評価とは上位何%かを合格させるというものです。試験の出来が悪くても周りの受験者の出来がもっと悪ければ合格する可能性がありますし、試験の出来が良くても周りがもっと点数を取っているのならば不合格になります。

 以上からわかると思いますが、絶対評価と異なり(多くの国家試験が採用している)相対評価は他人との競争という要素があります。
 すなわち、周りの受験者がどのような連中なのかによって合格のしやすさが異なってきます(弁理士試験で見ると、合格者は東大、京大などの国立大卒が多いです。また受験者の大半が大学院卒です。つまり、お勉強慣れした受験者との競争に勝たなければなりません)。
 ただ、試験の出来が良くなかったからといって不合格だとは限らないという希望もあります。

 行政書士は絶対評価です。司法試験をあきらめてこの試験に流れてくる受験者もいるため、知識レベルが非常に高い人もいると考えられますが、絶対評価ですのでどのような受験者がいるかは合否に全く関係のないことです。

 中小企業診断士試験も絶対評価だと言われていますが、記述試験もそうなのかは?です。

<データから>

 直近10年間の受験者、合格者、合格率の平均値を以下に示します(司法予備試験は直近5年間)。
 合格率は受験者数に対する合格者数から導きだしました(1次試験合格率×2次試験合格率という算出ではないので、合格持越し制度がある資格については数値に多少のズレがでてきます)。

  受検者 合格者 合格率
弁護士(司法試験) 7416 1949 27.0%
弁護士(予備試験) 8713 287 3.2%
弁護士(予備試験ルートの司法試験)(参考) 216 152 70.4%
司法書士 23471 836 3.6%
行政書士 58296 5090 8.9%
土地家屋調査士 5243 438 8.4%
弁理士 7411 597 8.0%
公認会計士 19096 2123 12.7%
税理士 46590 964 2.1%
社会保険労務士 48109 3433 7.0%
中小企業診断士 14295 944 6.6%
不動産鑑定士 975 109 11.5%

 昔から最難関と言われる司法試験ですが、その合格率は27.0%と他の資格に比べて高いです。
 とは言ってもその受験資格を勝ち取るための予備試験合格率が3.2%と狭き門になっています。
 ちなみにロースクールに通わず、予備試験ルートで司法試験を受験した人の合格率は70.4%もあります(ロースクール経由の受験者よりも実力者が多いということでしょう)。
 予備試験→司法試験の合格率は、
 3.2%×70.4%=2.2%

 やはり弁護士になるための道は非常に険しいようです。

 ここで上表をよく見ると予備試験ルートで司法試験に合格するよりも税理士試験全科目合格の方が低いです(2.1%!)。
 受かった科目は永久に有効だという制度が導入されている税理士試験ですが、全科目(5科目)合格する確率は士業で一番低いのです。

 司法書士も合格率3.6%と非常に低いです。弁理士試験の同期合格者に司法書士試験合格者がいますが、司法書士試験は範囲がめちゃくちゃ広かったと語っていました(司法書士試験合格者が2人いて、1人は弁理士試験の方が難しかった、もう1人は司法書士試験の方が難しかった、とか)。

 次に、直近10年間のデータから各試験の受験者数と合格者数のバラつき(変動係数という指標:パーセントが大きいほどバラつき大)についてまとめてみました。

  受検者数のバラつき 合格者数のバラつき
弁護士(司法試験) 17% 9%
弁護士(予備試験) 21% 41%
司法書士 17% 12%
行政書士 18% 15%
土地家屋調査士 13% 10%
弁理士 27% 33%
公認会計士 45% 52%
税理士 13% 12%
社会保険労務士 11% 36%
中小企業診断士 8% 16%
不動産鑑定士 23% 13%
平均 19% 23%

 上表の数値(パーセント)が大きいほど年によって受験者数、合格者数に変動があることをあらわします。

 以下のように考えてみました。
受験者数の変動大
 →急に人気が出てきてライバルが増える(逆もあり)
合格者数の変動大
 →合格者を増やす、減らすなど見えない力が作用しやすい

 上記からさらに、
受験者数のバラつき小、かつ、合格者数のバラつき小
 →毎年安定していて、合否を読みやすい
受験者数のバラつき大、または、合格者数のバラつき大
 →不安定な要素があり、合否を読みにくい
 と考えることにします。

 以上から合否の読みやすさは次のような感じです。
 合否を読みやすいかどうかは試験間の相対的なものです。

弁護士(司法試験) 合否を読みやすい
弁護士(予備試験) 合否を読みづらい
司法書士 合否を読みやすい
行政書士 合否が読みやすい
土地家屋調査士 合否を読みやすい
弁理士 合否を読みづらい
公認会計士 合否を読みづらい
税理士 合否を読みやすい
社会保険労務士 合否を読みづらい
中小企業診断士 合否を読みづらい
不動産鑑定士 合否を読みやすい

 特に社労士は受験者数に変動が少ないのに合格者数の変動が大きい試験(バラつきが3倍以上)です。
 直近10年間の合格率平均は7%ですが年によって合格者が大きく異なり、これに泣かされた受験者も多いのではないでしょうか。

 合格者数のバラつきと合格率をグラフ化しました。

 バラつきが小さい群(左側7つ)と大きい群(右側4つ)に分けてみました。
 総合的に見ると、なんとなーくですが、それぞれの群については左側に行くほど(しっかり勉強した人にとって)合格を計算できる資格だと言えるかもしれません。

 大学生にとっては、士業は縁遠い資格かもしれません(私もそうでした)。

 ただ、社会人になってしまえば、出身大学がどこかよりも持っている資格が何かで人の見る目が変わる場合が多いと感じています(特に感じるのが名刺交換のとき)。
 これは転職においても同じことが言えるかもしれません(PRするものがない人よりも何かの専門家だと言えるという点で)。

 また、こうした資格は独立にも役立ち、一生ものの財産になります。

 いずれも生半可なものではないですが、それを理解した上でチャレンジするのなら高い意識で臨めるでしょうし、軽い気持ちで挑戦する場合よりも合格がグッと近くなると思います(書いているうちに予備校の宣伝っぽくなってきたのでこのへんで止めておきます)。

~資格関連記事~
10士業:各士業の報酬額
 「10士業:試験免除ルート
10士業:男と女で合格率は違うのか?
10士業:登録者数で見る資格の有用性
出身大学と資格試験合格率の関係は?
記憶の達人の記憶方法
記憶力:資格挑戦の限界年齢は?
資格:過去問メインの勉強は有効か?

LINEで送る