前回記事「MBAは就職、転職の役に立つか?」で謎が多いMBAについて触れましたが、博士号というのも謎(というより幻想?)が多いです。
修士課程を修了した後、さらに3年間の博士課程(ドクターコース)を経て博士号を取得することになります。
大学に現役合格し、さらに一回も足踏みすることなく博士号を取得したとしても学部4年+修士2年+博士3年=9年はでかいです。
28歳になる年に社会人1年生ですからね。
私の知り合いにも博士号取得者が結構います。
本サイトにたびたび出てくる薬剤師の友人もその一人です。
博士号を取った動機から現在にいたるまで本音トークが聞けました。
以下、Q&Aで記載します。
Q.どうして学位を取ったの?
A.大学教員になれたらノルマとかない楽な社会人人生を送れそうな気がしたから。
Q.・・・他には?
A.学歴コンプレックスを解消したかったから。高校は進学校だったけど、2浪して、しかも満足のいく大学に行けなかったから。それを挽回したかった。
Q.で、学位取ってよかったと思う?
A.学歴コンプレックスだけは少し緩和された気がするよ。
Q.他にいいことあった?
A.特にはないね。ポスドク何年かやったけど大学教員なんてどこにも空きはなかったし。その後、メーカーに就職したけど特段待遇も良くなかった。今は病院薬剤師として職に困ることはないけど。薬剤師の資格持ってて良かったよ。あ、学位持ってるってことで医者から一目置かれているのは良かったことに入るかな。
Q.博士号持ってても就職の役には立たないってこと?
A.まあ、そうだね。博士号取った後、ちゃんと企業に就職できる人もそれなりにいるけど、そういう連中は元々持っている人間性というか、ポテンシャルで就職しているって気がする。学位なんか関係なくちゃんとやれる連中だね。俺のまわりでまともに就職できていないのを見ると、博士号に何か過剰な期待をしていたのが多いかな。人のことは言えないけど。
Q.じゃあ博士号の意味は?
A.大学教員になるための最低限の条件になっているからってだけのことじゃない?あとは学歴コンプレックスを解消して精神的に安らぐことかな。
Q.じゃあ、博士号はおすすめじゃないってこと?
A.ちゃんとしてる人だったら就職も自力でなんとかできると思うから行っても問題ないけど、動機があやしい人は絶対やめといた方がいい。身を持って経験したから自信を持って言える。ただ俺の場合は学歴コンプレックスだけは解消したから、それに関しては行った意味があったと思っている。でも今となっては学位なんかより食える国家資格だね。
この友人は全国都道府県の進学校の偏差値情報が頭に入っているという学歴マニアです。自身の高校も総理大臣とノーベル賞受賞者を輩出した神奈川県の名門だったと誇らしげに語ってきます。それだけに他の人よりも博士号への執着が大きかったのかもしれません。ただ、博士課程進学のもう一つの理由からもわかる通り、性格は怠け者以外の何者でもありません(なぜ学位がとれたのか不思議)。
近年の学位取得者は毎年1万5000人ぐらいです。(文科省データ:「平成28年度学校基本調査(確定値)の公表について」から。以下同様)
仮に日本のトップ100の企業が各社10人の博士号取得者を正社員として採用したとしても(この採用数が妥当かどうかはわかりません)トータルで1000人。
日本の大学教員数は約18万人です。28歳から68歳までの40の年代で割ると各世代4500人。この人数が毎年退官になって、その分、席が空くと仮定。
上の2つの数字を足しても5500人(1000人+4500人)、1万5000人の受け皿にはなっていません。そして、余ってしまった人たちが各世代にかなりいるでしょう。
上記Q&Aに“ポスドク”という言葉がでてきました。これは大学などの任期付き研究員のことです。大学教員の席が空くのをうかがいながらポスドクをやっている人はかなり多いと思います。友人は東大で3~4年ポスドクをやったらしいです。
文科省が博士課程修了者の就職率データを出しています(以下)。
(出典:文科省「平成28年度学校基本調査(確定値)の公表について」図12 博士課程修了者に占める就職者の割合等の推移)
こうした現実はしっかり頭に入れておいた方がいいでしょうね。
それでもやっぱり博士課程に進学するというのなら、それはいいんじゃないでしょうか?
個人的には、博士号は就職にはあまり役に立たない気がしますが、転職には役に立つような気がします(根拠はありません。なんとなくです)。
前にも言いましたが、学位を取るなら社会人ドクターというのが理想的です。
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