大学院に進学する意味はあるのか?

理系の場合、大学院進学を考えている人が少なからずいると思います。大学院は通常、修士課程2年間博士課程3年間です。私が学部生の頃、同じ学科の連中は半分以上が大学院に進学していました。それからほとんどの人が修士を出た後、就職しました。社会に出てからそれなりの時間が経過し、大学院に進学した意味はあったのかと振り返ることがあります。

社会全体として見ると、大学における研究活動は科学や文化レベルを押し上げる行為です。広い目で見たら意味があると言えるでしょう。

個人レベルではどうか、修士課程でやった研究が仕事に活きるということはまずありません。研究テーマそのものに意義を見出すのは難しいかもしれません。

ただ、社会に出てモノづくりやサービスづくりに携わるようになって、大学院で研究に取り組んだ経験が役に立ったのかも、と思うことはあります。

新商品、新サービス、新たなビジネスモデルに挑戦することはどのような企業においても重要度が高いと言えます。例えば、コンサルティング業務は自分もわからないことを勉強しながら進めていくことが多いです(昨日は素人だった分野について明日は専門科目になっていなければならないというノリ)。

どんな仕事でも、謎が多い、世の中に詳しい人がいない、ということへのチャレンジに大きな価値があるのではないでしょうか。これはまさに大学院で経験することと同じです。

大学院で経験した試行錯誤は、その後の仕事において自分の思いを論理的に具現化するのに役立つ気がします

ただ、こうしたことは会社に入ってからでも経験することはできるでしょう。働きながらそれを学んでいくのか、それとも大学院でじっくり腰を据えてやるのか、という違いということになり、大学院進学の意味に結論は出ません。

高校野球で即プロ入りするタイプ、社会人や大学で鍛えた後にプロ入りするタイプがいますが、もしかするとそれと同じことが言えるのかもしれませんね??

ちなみに博士課程は、一生研究職で生きていく、くらいの固い意志がなければやめておいた方がいいです。学歴をロンダリングしたいというのが最も危険です。学位を取ったとしても就職先を見つけるのに相当苦労するでしょう。個人的には社会人ドクターとして学位を取るのが理想的ではないかと思っています(それが許される環境は限られるのかもしれませんが)。

上記は精神論的な話になってしまいましたが、実際に学部、修士、博士で生涯賃金がどれくらい違ってくるのか気になるところです。内閣府の公表資料で生涯賃金を分析したものを見つけました(下リンク)。

大学院卒の賃金プレミアム―マイクロデータによる年齢-賃金プロファイルの分析― http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis310/e_dis310.pdf

これによると生涯賃金収入(65歳まで計算)は、

(男性)学部卒 2億9,163 万円  大学院卒 3億4,009万円

(女性)学部卒 2億6,685万円   大学院卒 3億1,019 万円

となっており、男女とも大学院卒の方が大きくなっています(院卒として評価してくれる企業に入って順風満帆に人生を送った想定での話でしょう。これからの世の中を従来と同じように考えてもいいのか、という問題はあります)。

また、大学院卒の場合、修士と博士で授業料支出、生涯勤務年数ともに違ってきます。それを加味した内部収益率という一種の利益率(割合が大きい方が優れている)が示されています。

(男性)修士 10.7% 博士 4.9%

(女性)修士 10.4% 博士 4.7%

以上を数字(賃金)だけから単純に判断すると、男女とも修士まで行くのが一番良さそうです(資料は理系文系を明確に区別していませんが、理系に当てはめて考えるのがいいのでしょうね)。

修士に行くメリットがここで初めて見出されました。

ただし、これはモラトリアムな気持ちで修士に行く学生にはあてはまらないでしょうし、選択肢が狭くなるだけなので真に受けない方が無難でしょう。

関連記事:就活における大学院というカード
     大学院(研究室)にはどんなメリットがある?
     大学教員(研究者)になりやすい世代は?

LINEで送る