鉄(Fe)に関わるビジネス

前回、希少金属であるについて触れたので、今度は豊富な資源であるについて触れます。

鉄は建築物、自動車・航空機などの輸送用機械、モノを作る産業機器、電気製品など様々なモノに使われています。鉄鋼の生産量は国力をあらわす指標だと言われることもあります。

この鉄に関わるビジネスを独自に整理してみます。

まず、“”と“鉄鋼”という2つの表現がありますが何が違うのか?

鉄は原子記号で“Fe”です。鉄鋼(あるいは鋼)とは微量の炭素(元素記号“”)を含む金属のことを言います。炭素以外にもケイ素(Si)マンガン(Mn)などの含有成分があり、成分量の違いで硬さや加工のしやすさなど性質が異なってきます。こうした性質を踏まえ、用途に応じた鉄鋼を製造するところに技術が結集されていると言えます。

以下、下図に沿って大まかな流れを示します。

鉄は鉄鉱石から作られます。他の金属資源に比べると鉄は桁違いに豊富です。ただし、鉄(Fe)を多く含有する良質の鉄鉱石というと限られてきます。日本は主にオーストラリアブラジルから輸入しています。鉄鉱石鉱山会社と契約した商社(こうしたビジネスを手掛けるのは大手商社)を通じて鉄鉱石が鉄鋼メーカーにわたります。輸送は海運(ウィキペディア:海運)によって行われます。

参考:海運大手は日本郵船商船三井川崎汽船の3社

多く使われる鉄鉱石は赤鉄鉱と呼ばれ、化学式は“Fe2O3”であらわされます(下写真:ウィキペディアより)。

これを鋼材とするためには酸素を取り除く必要があります(化学用語で言うところの“還元”です)。こうした鉄鋼生産は高炉メーカーの役割です。

高炉メーカー大手4社新日鉄住金神戸製鋼所日新製鋼JFEスチール)が国内生産量の7割以上を占め、残りが電炉メーカー特殊鋼メーカーになります。

高炉:これが鉄鋼生産の主流。大手4社

電気炉:鉄スクラップ等から普通鋼を製造。中小企業比率が高い

特殊鋼(電気炉):鉄スクラップとレアメタル等の副原料を用いて硬さ、耐摩性等の特殊な機能を持たせた高級鋼を製造。用途は自動車部品など

 

<参考:鉄の作り方>

一般社団法人日本鉄鋼連盟HP

上記リンク先の工程図からは、鉄鋼製造というのは一見すると大味なように感じますが実は違います。上述したように知的財産であふれた世界です。以前、日本の鉄鋼メーカーからノウハウが韓国、中国に流出した事件がありました。300億円の和解金で決着しましたが実害はそんなものではないかもしれません。

参考:日経新聞記事「韓国ポスコ、新日鐵住金に和解金300億円

 

なお世界の粗鋼生産量の半分以上は中国で作られています(下グラフ)(粗鋼とは自動車などの材料として利用される前、つまり圧延・鍛造などの加工前の鋼)。日本鉄鋼メーカーのノウハウが流出したり、中国内需の減少で余った分と競合したりして日本の鉄鋼メーカーが苦しんでいるようです(踏んだり蹴ったりですね)。

【出典】資料:GLOBAL NOTE 出典:WSA http://www.globalnote.jp/post-1402.html

こうして生産された鉄鋼は鉄鋼卸メタルワン阪和興業など)や加工メーカーなどを通じて建設業自動車製造業など様々な分野で利用されます。

国内需要は建設自動車産業機器土木造船電機が多いです(下円グラフ:経産省「鉄鋼業の現状と課題(高炉を中心に」平成27年4月21日)。

最近は鉄の代替材として炭素繊維強化樹脂が出てくるなど、“化学メーカーvs鉄鋼メーカー”という構図も出てきました。自動車のボディを軽量の炭素繊維に代替すると燃費は格段に向上するでしょう。鉄鋼業もこうした動きに対抗すべく、ホットスタンプ材と言われる強度の高い部材を展開するなどしています。こうした企業の動きを“環境”とか“安全性”といった視点で見ていくと面白いでしょう。

 

その後、老朽化した建造物、自動車などに含まれる鉄は加工業者がギロチン、シュレッダー、プレスし(鉄スクラップとなり)、高炉メーカーへと流通します。※

※静脈産業の事業者は、鉄鋼新聞で検索する、あるいは一般社団法人日本鉄リサイクル工業会の会員企業を調べることでわかります(下リンク)。

 

ちなみに2016年において粗鋼生産量約1億トン(104,774,000トン)のうち、主にスクラップを原料に生産を行う電炉メーカーによる生産量(リサイクル量)は約2,000万トン(23,261,000トン)です。※

※情報源:一般社団法人日本鉄リサイクル工業会

以上、かなり大まかに説明しました。

 

こうした流れの裏にはさまざまなビジネス課題やリスク、そしてそれらに関わる業務があります。例えば上述した“環境”という視点だと、

■鉱山開発においては、環境団体の反対運動など開発リスクがあります。またこうした事業をはじめるためには環境アセスメントが当然必要になります。

■海運ではバラスト水(港の海水を船の重しにして安定を図るもの)によって海の生態系が変化します。こうした問題を防ぐためには水処理などの対策が必要です。

■鉄鋼製造では大量の電気を使い、二酸化炭素が大量に発生します。省エネルギー化は続けていかなくてはならないでしょう。日本の鉄鋼メーカーの省エネはかなり進んでいると言われていますが、IoTなどの技術を駆使して改善する余地があるかもしれません。

■建設や自動車メーカーは鉄鋼や代替品の特性を把握し“環境”や“安全”などに資するモノを選択していくことが求められるでしょう。

こうした業界を狙っている人はどう関わっていけそうかイメージできそうですか?

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