専攻を活かせる(かもしれない)企業の見つけ方

大学の専攻を仕事に活かそうと考えるのは普通のことでしょう。

ただ、その専攻がどのような企業でどのように役に立つのかイメージするのは難しいことです。医学部とか薬学部などであればその後の進路に迷いがない人も多いかもしれませんが、理学部とか文学部などの学科を専攻していたら、どのような企業にその分野に関連する業務があるのか迷う人は多いのではないでしょうか。

私が教えている「環境」と名のつく学科でも同じ悩みがあるようです。 “環境を勉強しましたが仕事はあるのでしょうか?”という声が聞こえてきそうです(今は売り手市場なので、そこまで深刻ではないかもしれませんが)。

今回紹介するのは昨年度の受講生に教えた手法です。学生はもちろん、社会人も多くの人が知らないはずです。インターネット環境さえあれば無料ですぐに誰にでもできます理系文系関係なく使えます(ただし、主に製造業が対象ですが)。

自分が興味のある商品やサービス、分野、技術について取り組んでいると思われる企業をキーワードを手掛かりに探すというものです。

この手法の利点は通常では入手しづらい情報(例えば公開情報が少ない中小企業の情報や世に出ていない先端的な取組み情報など)を得ることができることにあります。

その手法とは企業の特許情報を利用すると言うものです。

特許と言うと理系かよと思うかもしれませんが、これは文系就職を含めて割と広く活用できます(この手法に理系文系は関係ありません)。

ただし、特許出願をしている企業が検索範囲なので、特許と無縁の業界や企業は対象外となってしまいます。

とりあえず次のような学生を想定してみます。

・理工学部

・環境ビジネスに興味がある

・そういった分野に取り組んでいる企業に就職したい

まず利用するのは「特許情報プラットフォーム」(J-plat-Pat:ジェイ・プラット・パット)と言われるサイトです(下記URLおよびトップ画面)。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage

特許庁に出願された情報は原則、一定期間後に全てこのサイトで公開されます。そして誰もがその中に記載れている情報(企業名、その企業が注目している市場、その企業が課題と認識していること、その企業が認識している課題を解決する技術など)を閲覧することができるのです。グーグル検索と同じように絞り込みもできます。これらの情報は特許出願時に第三者がすでに似たようなものを出していないか、といったことを調査できるよう供されているのですが、実は就職における企業探しにも活用し得ます。

1.サイトに入ったら、上部に表示された「特許・実用新案」というところにカーソルを合わせてください。すると、下図のようにプルダウンメニューが出てきます。

2.今回はその中の上から2番目の「特許・実用新案テキスト検索」をクリックしてください(上図)。

3.特許・実用新案テキスト検索画面の赤枠で囲った部分に全てチェックを入れてください(下図)。これがチェックを入れた文献の中から検索することになります。

4.画面下の「キーワード」の検索項目からプルダウンメニューを表示させてください。下図のようにどのような項目について検索するのか出てきます。この各メニューについて少しだけ説明しますと、一番上の「要約+請求の範囲」とは特許出願中や特許となった情報の中の「要約」部分と「請求の範囲」と呼ばれる部分が検索範囲となることを意味します。この検索範囲を文献全文に広げたければ「公報全文(書誌を除く)」にカーソルを合わせることで出願人名や出願情報などの書誌情報を除く全文が検索範囲となります。(請求の範囲とは何かとか書誌とは何かなど説明していると長くなりますので、細かいこと無視してください)

5.ここでは検索項目を「要約+請求の範囲」として検索キーワードの枠の中に「太陽光発電」と文字入力してください(下図の上部赤枠部分)。入力後、キーワードで検索ボタン(下部赤枠)をクリックしてください。(太陽光発電に興味がある学生が太陽光発電に取り組む企業を見つけたいという状況です)

6.検索結果が下の画面です。画面に「検索結果が1000件を超えました……」と表示されています。このデータベースは1,000件を超える検索結果を表示することができません。この場合、絞り込み検索をする必要があります。

7.絞り込み検索します。画面下部のキーワード検索の2つめの枠(赤枠)に検索項目を「要約+請求の範囲」、検索キーワードを「メンテナンス」としてください。これで「太陽光発電」と「メンテナンス」の2つのキーワードを含む文献に絞り込みます。キーワード検索ボタンを押します。(太陽光発電のメンテナンス技術に取り組む企業を探している状況です

8.検索結果が画面の下の方に出てきました。ヒット件数127件とあります(下図左赤枠)。一覧表示ボタン(右赤枠)をクリックしてください。

9.検索結果一覧がでてきました(下図)。

これらの文献が「太陽光発電」と「メンテナンス」というキーワードを(要約+請求の範囲に)含む文献です。上に表示されているものほど新しい情報で下に行くほど古い情報になります。「文献番号」(上図赤枠)をクリックすると文献詳細が表示されます。「筆頭出願人」というのはその出願をした者がでてきます(「筆頭」というのは複数の者が共同で出願した場合の筆頭に記載された者のことです)。

この出願人情報(企業情報)が今回の検索の成果の一つです。どのような企業が「太陽光発電」の「メンテナンス」に関して興味を持ち、事業化の準備や技術開発を行っていることがわかります。まずは出てきた企業が自分の興味のあることに取り組んでいる可能性があるということがわかりましたので、文献の詳細を確認するなり、別途、インターネットなどで企業情報を調べるということになります(ただ技術的な内容については難解な表現ばかりでほとんどの人がわからないと思います。そうした技術詳細に興味がなければ無視してください)。この手法を使うと情報をあまり公開していない非上場企業を見つけるのにも役立ちます。

また、この文献だけだとこの企業の全体像がなかなかつかめませんが、そうした場合は検索範囲を「出願人」にしてキーワードにお目当ての企業名を入力して検索すれば、その企業の出願情報がズラリと出てきます(ここでは省略)。この絞り込みをうまく行うことがカギになります。

10.特許文献からどんな情報が得られるのか簡単な部分だけ説明します(技術的な部分は割愛します)。文献詳細の画面赤枠で囲った「詳細な説明」をクリックしてください。

11.詳細な説明が出てきました(下図)。

まず「技術分野」ではその出願人がどのような市場を見据えているのかわかります。「背景情報」「発明が解決しようとする課題」からは従来の市場・技術課題は何だったのか、どうやってその課題を解決しようしているのかが記載されています。記載内容が難解な場合が多いですが、キーワードからその企業がどういった分野で何をやろうとしているのかイメージできるかと思います(全くイメージできない場合もありますが)。これがもう一つの検索成果です。

今回の検索でてきた文献(赤下線部)からだけでも、この企業が無人飛行隊(おそらくドローンをイメージ)を利用してメガソーラーパネルのメンテナンス技術を検討していること、メガソーラー市場ではパネルの汚れが事業の問題であり、この問題をいかに解決してくかがビジネス的な課題であることが示唆されました。

ただし、これらの情報は開発サイドから見て技術的可能性を極限まで広げた場合のものですので、経営方針とズレがある場合も多々ありますのでその点は注意しながら多くの情報を集めていく必要があります。

文献の技術的内容を理解するのは容易ではありませんが、キーワードに関連する企業を探すというところまでであれば誰でもすぐに使えるものです。

本手法の活用用途は広いです。例えば、お目当ての企業、その分野で競合する企業の毎年の特許出願件数を比較してどちらが権利をたくさん保有しているか(どちらが知的財産権の取得に力を注いでいるか、すなわち守るべきと考えている技術が多いか)比べることもできます。この手法の演習を行った授業においてプログラム関係の特許情報から卒業研究の参考になるソースコードを探しだした学生もいました。

LINEで送る