化学メーカーに就職したいという人はどのくらいいるでしょうか?
学生の間では理系の場合、化学メーカーには修士を出た方が採用されやすいという噂があるようです(過去の就職実績からそのような噂が流れていて一応、根拠はあるみたいです)。
実は私は応用化学科を出ていますが、学生の頃は化学メーカーが何をやっているところか全く理解していませんでした。
化学メーカーは通常、B2B取引(記事「B2C、B2Bとは?」参照)です。一般消費者から遠いところにあるため学生にとっては志望動機を見出すのがなかなか難しい分野かもしれません。一方で、B2B取引ゆえに業績が安定した企業が多いと言われています。多くの安定志向の学生が狙っているようです。
しかしながら数多くある化学メーカーの(というか化学メーカーでなくても企業の)どこを見たらいいのでしょうか?
安定志向の学生としてはより業績が良い企業、待遇が良い企業を見つけたいところでしょう。
これまでの記事を踏まえて化学メーカーを客観的な情報のみで整理してみます。
記事「大企業と中小企業の違いについて」にて紹介した指標「売上高÷従業員数」を使ってみましょう。
この指標は従業員一人当たりの売上高をあらわします。例えば、一人当たりの売上高が1,000万円だとすると給与が1,000万円を超えることはないと理解できます。給与が高い、競争力があるという企業はやはり、一人当たりの売上高が大きい企業だとも言えるかもしれません。ただし、製造しているモノは企業によって異なるため(製品の原価率は異なるため)、必ずしもこの値が大きければ良いと結論づけることまではできないでしょう。あくまで同じ業界の企業を見る一つの視点にすぎないと考えてください。なおデータは本記事作成時のウィキペディア閲覧情報です(必ずしもデータの信頼性が高いとは言えません)。
下表のメーカーは「化学メーカー」と入力してウィキペディアに出てきた企業です(ウィキペディア:化学メーカー)。総合化学メーカー、誘導品メーカー、電子材料メーカーの3つに分類されています。表中「連結」は関連企業を含めた値を意味します。入社したいのが本体企業だとすると、「単体」の値を参考にするのがいいでしょう。空白はデータなしです。
「売上高/従業員数(単体)」に関して、2億円を超える企業から4,000万円代の企業まで様々です。特に信越化学工業は2億1,725円と突出しています。何か強みがあるのかもしれません(ここでは個別企業についてこれ以上分析しないので、興味のある人は当該企業のホームページや有価証券報告書(参考記事「企業研究の情報源:有価証券報告書」)を確認してはどうでしょうか?上表は一時点の業績から持ってきたものですので、これだけで判断するのは危険です。数年間の業績推移や事業内容も見るべきです。
また、これら以外にも「化学メーカー」でキーワード検索してでてきた企業についても同じようにまとめてみました。
先に示した表中の有名企業よりも規模が小さい企業が多いですが、こうした企業でも「売上高/従業員数」に関しては先の有名企業にも劣らない企業があることがわかります。中小企業の評価指標の一つとして使えそうです。
ちなみに表中の群栄化学工業には前職時に訪問したことがあります。そのときに案内してくれた群馬エリアの営業担当者から地元高崎では名の知れた優良企業だと聞いたのを思い出します。そうした評価はこの数値にもあらわれているようです。
今回は私の講義を受けている学生に化学メーカー志望者が多いのでこの業界を取り上げました。他の業界についても、こうした指標とともにおいおい触れていこうと思います。
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