サービス業とは?~製造業との違いから~

私は30代中頃に製造業界から損害保険業界に移りました。職場の雰囲気とか仕事のやり方など全然違いました。一番の違いはモノが見えるかどうかです。

メーカーであれば“物品”という見えるモノを作ったり売ったりします。自分がどのような役割で何をやっているのか明確です。

対してこの業界は “保険”という見えない商品を扱っています。自分が何をやっているのかわかりにくいです。私はこの損保の中でコンサルティングというさらによくわからない業務に就いていました(大学時代の恩師に紹介され、なんとなく行ってみようかな、とあまり深くは考えていませんでした)。

こうした目に見えないモノを提供する業種を“サービス業”といいます。

サービス業と言われるものは保険だけでなく銀行などの金融全般、記事「ねらい目の職種は?」で紹介した医療分野もそうですし、資格取得のための予備校などの教育もそうです。その他にも宿泊、レジャー、通信、運輸、情報、エネルギー、外食など挙げていったらきりがありません。

 

そして、私がサービス業に足を踏みいれて業務上一番感じたのはスピード感です。

メーカーの場合、新製品を作るためには設備投資や材料の仕入など莫大な費用がかかります。作って売れなかった場合は責任問題になりかねません。

従って新しいことをやろうとすると(企業としては新しいことをやれと声高に叫んでいたとしても)あちこちから反対があります。試作評価を重ねたり、マーケティング調査をしたり、社内各部署のキーマンを味方につけたりしてやっと新製品にこぎつけることができます。年単位の時間を要します(下イメージ図)。

 

一方、私が所属していた部署ではサービスメニュー化するのに必要なのは1か月ぐらいでした(内容によって差はありましたが)。

例えば、震災後、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーが普及しました。設備は数十年間稼働するもので地震リスクや天候不順リスクなどが問題になりそうです。そうした再生可能エネルギーに関するリスク評価サービスを、元々有していたノウハウを活かしてパパッとサービスメニュー化しなければなりません。

サービスは無形なものです。通常、設備投資も材料の仕入も必要がないため(失敗してもそれほど痛手がないため)、そのメニューが顧客企業に喜ばれるだろうと判断されればそれでいいのです(下イメージ図)。

 

少し具体的な話になりますが、損保におけるコンサルティングの標的は保険顧客企業の様々なリスクです。

例えば運送業の自動車事故を減らせば、それだけ保険金の支払いが減ります。損保会社にとって良いだけでなく、事故が減って保険料が下がれば企業の支払い負担を減らすことにもつながります。

これは自動車事故リスクという一つの例ですが、他には地震リスク、火災リスク、製品不良リスク、盗難リスク、労働災害リスク、環境汚染リスク、知的財産リスクなど様々なリスクが保険商品になり、かつ、コンサルティング対象になります。“リスク”と考えられるものの多くが保険と関わりがあります。俗に言うホールインワン保険もその一つですね。

転職前は文系職場かと思っていましたが、そのようなことはなく、理系、文系という区分けは感じませんでした。ただ、学生がいきなりこうしたコンサルティングという特殊な職種に就くことはあまりお薦めしません(コンサルティング以外の保険業務でしたら全然問題ないですが)。バックボーンがあってのコンサルティングです。自分の専門領域が定まっていないままこうした職種についても自分の血肉にはなりにくいと感じます(顧客企業の方も何の積み重ねもない若手社員に知った風な口を利かれたくはないでしょうし)。

就職してからの話になりますが、自分が勝負する領域を固めていけば、ステップアップをする機会がいつかやってきます。そうした経験を積めるかどうかも就職活動における視点になるでしょう。

 

 宿泊サービスやレジャーサービスは宿泊施設やレジャー施設という見えるモノがあるじゃないかという疑問があるかもしれませんが、サービスとは売買した後にモノが残らない、効用や満足を提供する形のない財と言われています。そうするとモノは買ったら家に持って帰ることができますが、ホテルに宿泊したり、レジャー施設に遊びに行ったりしてもその体験は家に持って帰ることはできず、残るのは形のない楽しい思い出なので、やはりサービス業ということになります。また、第1次産業(農林水産業)、第2次産業(製造業、建設業等)、第3次産業(第1次産業、第2次産業以外)という古典的な分類があり、第3次産業が一般的にサービス業とほぼ同義だと言われています。製造業、卸売業、小売業、サービス業と分類されることもあります。定義や分類にこだわっていると交錯することが多くなるかもしれません(卸売業や小売業はサービ業なのかそうでないのか、とか)。何かの試験で出題される可能性があるとか(ないとは思いますが事業の届出に必要とか)でなければ、就職活動でこれを深掘りするのは体力を消耗するだけのような気がします。

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